カテゴリー:[連載小説]像に溺れる

  • 連載小説「像に溺れる」

    #70 示威――像に溺れる

    ヤナガワサンとファミレスで話した次の日、昼休み明けに登校してきたヤナガワサンの姿に、教室は静まりかえってしまった。 髪の毛が、ほとんど白に近い金になっていたのだ。 ぼくの前の席についたその金髪は、教室内の意識を引…
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  • 連載小説「像に溺れる」

    #69 発心――像に溺れる

    「やながわさんは、あの団体の集まりに行ったことはあるの?」 口をついて出た疑問に、ヤナガワサンは眉間に皺を寄せながら「あー」と低く答えた。 「実際ヤベえんだけど、どうヤバいのかうまく伝えらんね」 そう言って…
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  • 連載小説「像に溺れる」

    #68 存在証明――像に溺れる

    「気づいたんだけどさ」 ポテトを齧りながら、ヤナガワサンはそう切り出した。 午後4時前のファミレスは閑散としており、ぼくらの他には大学生と思しきカップルと、カウンター席でビールを飲む老人しかいない。 「家、…
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  • 連載小説「像に溺れる」

    #67 精算――像に溺れる

    自転車の一件があってから、母から毎日のように塾に通うことを勧められるようになった。 レールを引き直そうという母の意図は明らかだったけれども、反抗的な感情は不思議と起きてこなかった。 母に従って塾に行くことに対して、肯…
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  • 連載小説「像に溺れる」

    #66 共鳴――像に溺れる

    ヤナガワサンとその母親には、血縁関係を想像させるものがないように思えた。 ヤナガワサンの鋭い目つきとは対照的に、母親の方はどこか疲れたような、焦点が定まっていないような印象を与える。 「ごめんなさいね、この子が」…
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  • 連載小説「像に溺れる」

    #64 胸騒――像に溺れる

    車窓越しに眺める日没後の空は、色あせはじめたジーンズみたいに、変質過程の一点を切り出したような曖昧な色彩を放っている。 電車が駅に止まって、開いたドアから吹き込む風が、さっきよりもだいぶ冷たくなっている。 空の色が深…
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  • 連載小説「像に溺れる」

    #63 後暗――像に溺れる

    冬の海辺に吹く風は、当然ぼくらのことなど配慮するはずもなく、冷気の塊を顔面にそのまま叩きつけてくる。 人気のない波打ち際を、老人に連れられた犬が跳ねるようにして進む。 寂れた雰囲気のなかで、犬の体にだけ熱が籠もってい…
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  • 連載小説「像に溺れる」

    #62 銹像――像に溺れる

    海に着くまで、ヤナガワサンは自分について、あるいは親について、とても多くのことを語った。 それらは形のうえでは波瀾万丈なものだったけれども、ヤナガワサンの語り口はそれをあまり感じさせなかった。 幼少期に経験した父…
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  • 連載小説「像に溺れる」

    #61 冀望――像に溺れる

    2時間くらい歩いただろうか。 風が午後の光を孕んで柔らかく肌に馴染んでいる。 車道の看板に、海辺の街の名前が表示されはじめていた。 高速のインターが近いらしい。 工場やホテル、ディスカウントストアやラーメン屋、民…
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  • 連載小説「像に溺れる」

    #60 カルマ――像に溺れる

    眠気がうっすら滲み出したような午前の住宅街に入り込み、ぼくらは自分たちの疲労を思い出していた。 ゆらゆら歩き続けるヤナガワサンの後ろ姿からは、高揚して奇声をあげる姿はもはや想像できない。 気休めのような冬の陽光が、肩…
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