カテゴリー:[連載小説]像に溺れる

  • #31 差別の黙殺――像に溺れる

    矢川先生がヤナガワサンの机のところまでたどり着き、クラスの空気が一気に重くなる。 各々が心拍数を計測されていたとしたら、きっともうこの段階でタバコの存在は明らかだっただろう。 ヤナガワサンはカバンを無防備に机の上…
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  • #30 持ち物検査――像に溺れる

    校門を出たところに見覚えのある姿があった。 が、それが遠藤であることに気づくまで、妙に長く時間がかかったように思う。 彼女が私服だったから、というのではなかった。 なんというか、行き交う大学生たちの流れの中で、…
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  • #29 水中で生きる術――像に溺れる

    「適応のハードルは同じじゃない。他よりハードルが高い人がいる以上、その人が適応できていないことをあげつらうのはフェアじゃない」 「それはそうだけどさ、それあの二人のことを言ってる? 梶谷君のことでしょ? そこ一緒にしち…
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  • #28 適応の形――像に溺れる

    部室棟付近を先生が見回っていることをヤナガワサンたちに告げてから、昼休みに二人の姿を目にすることはなくなった。 彼女らと入れ替わりに、毎日違う先生が回遊魚のようにそこを訪れてはぼくの方を見やり、つまらない海藻を目にした…
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  • #27 密告――像に溺れる

    先生はぼくにまっすぐ視線を向けていた。 太い眉と、いかにも頑なな精神を湛えた瞳は、ぼくを硬直させるのに十分な圧を持っていた。 人権はこういうところでも決まるのだと、他人事のように考えている自分がいたが、身体は動かない…
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  • #26 揺るがされないゲージ――像に溺れる

    こちらには目もくれずにタバコ部屋に向かうヤナガワサンの背後で、遠藤はあからさまにニヤけた顔を浮かべている。 白沢はそれまでとは打って変わって、血の温度を感じさせない、鉄仮面のような表情だ。 肩に力が入るのを感じる。 …
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  • #25 淘汰する側の者――像に溺れる

    文化祭開けの教室は、それまでとは異なる空間になっていた。 ぼくには受信できない電波が、みんなに共有されているように思われた。 べつに、あからさまに無視されているというわけではなかった。 けれども、ぼくからはぽっ…
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  • #24 人権ゲージ――像に溺れる

    「法学入門」の序盤に、「人権」という言葉について解説するコラムがあった。 ぼくは自然と、それを長い時間眺めていた。 そのコラムによれば、「人権」は多層的・多義的に扱われる概念だという。 法律で守られるべき具体的…
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  • #23 未知の生態――像に溺れる

    反応に困っているぼくを見て、白沢はからかうような笑みを浮かべた。 「闇深そうな人、なんか気になっちゃうんだよね」 ぼくのことを馬鹿にしているのか、あるいは一目置いているのか、判断に困るような態度を、白沢はあえ…
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  • #22 「羅生門」の記憶――像に溺れる

    教室の隅で行う作業はひどく孤独だった。 それは昼休みに部室棟の階段で感じる孤独とは性質の異なるもので、ぼくは自分自身の存在が、惨めに虐げられている者の像へと押し込められていくのを感じ、全身の皮膚がじりじりと、背後からの…
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