数学Ⅲの「裏技」との正しい付き合い方【裏技3選】

どうも, みなさんこんにちは。
高橋佳佑です。

今回は数学Ⅲの裏技についてお話しします。

裏技とは「高校数学では一般的ではない数学の定理や公式」 のことである

数学における“裏技” とは, 瞬間的に, そして簡単に答えが出せるような手法を指しているように感じます。

そのような手法は, 定理や公式等であることが多く, それらを証明するために高校数学の学習指導要領を超えた知識が必要になったり, 高校数学の知識を組み合わせ, あるいは拡張させて結論を得たりするから“裏技” と呼ばれているのだと思います。

つまり, 裏技というより, “高校数学では一般的ではない数学の定理や公式” というのが正確なのではないでしょうか。
ただ, この記事内では, “裏技” と呼ぶことにします。

「裏技」は答えだけ求める場合や検算のときに活用する

この“裏技”が使える状況は, 答えだけを求める場合や検算のときと考えておくのが無難です。

上で述べたように,“裏技” は実際には定理や公式であることが多いため, 適用できるかどうかの確認や記述が必要になります。
それを理解せずに使うのはとても危険で, 場合によっては減点, あるいは0点になることもあると思います。

数学Ⅲの“裏技”を記述試験で使うのはお勧めしません。

そもそも記述試験で, “裏技” を使ってパッと答えが出せるような問題が出題されるとは思いません。
入試で問いたいのは知識ではなく, 思考力や表現力ですから。

とはいえ, 答えが簡単に出せるのであれば, これは大変便利で効率がいいです。
入試問題でも, 答えのみしか聞かれない問題も存在しますからね。

ということで, ここから先はいくつかの“裏技” を紹介します。

数学Ⅲの裏技①:ロピタルの定理

高校数学の中では有名な“裏技” なのではないでしょうか。
極限値を求めるときに使います。

ロピタルの定理にはいろいろな形がありますが, 今回はそのうちの1 つを掲載します。

ロピタルの定理
$$\lim_{x \to a}f(x)=0, \lim_{x \to a}g(x)=0, g'(x)\neq0$$
のとき,$\displaystyle \lim_{x \to a}\dfrac{f'(x)}{g'(x)}$が存在すれば,$$\lim_{x \to a}\dfrac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x \to a}\dfrac{f'(x)}{g'(x)}$$

 

極限が$\dfrac{0}{0}$の不定形のときは, 分母と分子をそれぞれ微分した関数の極限を考えることができます。

例題)ロピタルの定理を活用する

実際に極限$$\lim_{x \to 0}\dfrac{x-\sin x}{x^3}$$について考えてみましょう。

まず,$\displaystyle\lim_{x \to 0}(x-\sin x)=0, \lim_{x \to 0}x^3=0$です。そして,$$\begin{eqnarray*}(x-\sin x)' &=& 1-\cos x\\ (x^3)' &=& 3x^2 \end{eqnarray*}$$であり,$$\begin{eqnarray*}\lim_{x \to 0}\dfrac{1-\cos x}{3x^2} &=& \lim_{x \to 0}\dfrac{1}{3} \cdot \dfrac{1-\cos x}{x^2}\\&=& \dfrac{1}{3} \cdot \dfrac{1}{2}\\&=& \dfrac{1}{6} \end{eqnarray*}$$となるから,$$\lim_{x \to 0}\dfrac{x-\sin x}{x^3}=\dfrac{1}{6}$$となります。

ちなみに2022年度神戸大学の入試問題の中で, $\displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{x-\sin x}{x^3}=\dfrac{1}{6}$であることは, 認めてよいと明記されていました。

数学Ⅲの裏技②:テイラー展開と極限

次に, ある関数を$x=a$の近くで多項式とみなす定理を紹介します。
ロピタルの定理と同様に, 極限値を計算するときに有効です。

テイラーの定理
$x\neq a$とし, $f(x)$が区間$[a, x]$(または$[x, a]$)で$n$回微分可能とすると, ある$c \in (a,x)$(または$(x, a)$) が存在して,$$\begin{eqnarray*}f(x)=f(a)+f'(a)(x-a) &+& \dfrac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots \cdots \\ &+& \dfrac{f^{(n-1)} (a)}{(n-1)!}(x-a)^{n-1}+\dfrac{f^{(n)} (c)}{n!}(x-a)^n \end{eqnarray*}$$が成り立つ。

 

さらに, 区間内の各点$x$で$n \to \infty$のとき,$\dfrac{f^{(n)} (c)}{n!}(x-a)^n \to 0$となれば,$$f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\dfrac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+ \cdots \cdots =\sum_{n=0}^{ \infty}\frac{f^{(n)} (a)}{n!}(x-a)^n$$と表せます。

このように関数$f(x)$を級数の形で表すことをテーラー展開するといいます。
特に$a=0$のとき,$$f(x)=f(0)+f'(0)x+\dfrac{f''(0)}{2!}x^2 + \cdots \cdots$$となり, これをマクローリン展開といいます。

特に重要なマクローリン展開

ここで, 特に重要なマクローリン展開を紹介しましょう。

  1. $e^x =1+x+\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^3}{3!}+ \cdots \cdots$
  2. $\sin x=x-\dfrac{x^3}{3!}+\dfrac{x^5}{5!}- \cdots \cdots$
  3. $\cos x=1-\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^4}{4!}- \cdots \cdots$

さて, これを利用して先ほどの極限$\displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{x-\sin x}{x^3}=\dfrac{1}{6}$を考えましょう。
分母が$x^3$であることから, 分子の$4$次以降の項は$\displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{x^4}{x^3}=0$のように$0$に収束します。

よって, 分子の次数は$3$次までを考えればよいから,$$\begin{eqnarray*}\lim_{x \to 0}\dfrac{x-\sin x}{x^3} &=& \lim_{x \to 0}\dfrac{x-(x-\dfrac{x^3}{3!}+ \cdots \cdots)}{x^3}\\ &=& \lim_{x \to 0}\dfrac{\dfrac{x^3}{3!}- \cdots \cdots}{x^3} \\ &=& \lim_{x \to 0}(\dfrac{1}{3!}- \cdots \cdots)\qquad \qquad(\cdots \cdotsは0に収束する)\\&=& \dfrac{1}{6} \end{eqnarray*}$$となります。

また, マクローリン展開を背景にもつ入試問題は, 不等式の証明などで頻出テーマです。

数学Ⅲの「裏技」③:パップスギュルダンの定理

極限の話から打って変わって回転体の体積に関する定理を紹介します。

パップスギュルダンの定理
面積が$S$である図形$D$を, それと交わらない直線$l$の周りに$1$回転させてできる立体の体積$V$は, 図形$D$の重心$G$と直線$l$までの距離$L$を用いて,$$V=2\pi LS$$と表せる。

(重心$G$が$1$回転するときに動いた長さ)$×$(図形の面積) で体積が求まります。

 

円や楕円は中心が重心になるから, この定理が使いやすいです。
また,一般的な図形の重心は積分を使って求めるので, パップスギュルダンの定理を使って体積を求めるのは面倒になります。

パップスギュルダンの定理――トーラスでの活用

実際に, 円を回転させて出来るドーナツ型の立体の体積を考えてみましょう。

この図形はトーラスと呼ばれます。
この図形の体積は,$xy$平面において, 点$(0, 3)$を中心とし, 半径が$1$の円を$x$軸の周りに$1$回転させてできる図形の体積と等しいです。

円の面積は$1^2 \pi=\pi$で$y$軸と円の重心(中心) との距離は$3$であるから,求める体積は,$$2\pi \cdot 3 \cdot \pi =6\pi^2$$となります。

実際, 答えのみを聞かれる問題で, 楕円を$y$軸のまわりに$1$回転させてできる立体の体積を求める問題が2018年度の早稲田大学人間科学部に出題されています。

おわりに

今回は数学Ⅲの裏技についてお話しました。

はじめにもお伝えした通り,これらの“裏技” は答えのみ必要な場合や検算に利用するのがよいです。
記述試験では使わない方が無難です。

日頃からこれらに頼った勉強は実践的ではないので, 正攻法な答案を作り, そのあとで使えるときに“裏技” もやってみるのは有効でしょう。
間違っても“裏技” のみで答えを出すだけの勉強はやめましょう。

記述答案の重要性とその学習法を 「数学Ⅲの記述答案を書けるようになりたい人が取り組むべき学習法」の記事で確認してください。


それでは, 今回はこの辺で!

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