【例題で学ぶ】過去問演習を通した数学ⅠAの勉強法

こんにちは。数学講師の大塚志喜です。

今回は実際の入試問題の過去問を利用して,普段の勉強にどう活かしていくかについて記事を書いていこうと思います。

今までの記事でもたくさん言っているように,ただその問題が解けるようになることだけを目的とした演習は得られるものが非常に少ないです。
1問からたくさんの効果を得る例を一つ紹介していきたいと思います。

今回は余弦定理を知っていることを前提とします。

過去問に取り組む前の練習問題1


まずは次の問題を解いてみてください。

円に内接する四角形$\text{ABCD}$において,$\text{AB}=3, \text{BC}=7, \text{CD}=7, \text{DA}=5$であるとする。このとき,$\text{BC}$を求めよ。

 

練習問題1の解答解説

この問題の模範解答は以下のようになります。

$\theta=\angle\text{BAD}$とおくと,四角形$\text{ABCD}$が円に内接していることから,$\angle\text{BCD}=180^\circ
-\theta$とわかる。ここで、$\triangle\text{ABD}$と$\triangle\text{BCD}$で余弦定理を用いると,
\begin{cases}
\text{BD}^2 =\text{AB}^2 +\text{AD}^2 -2×\text{AB}×\text{AD}×\cos\theta\\
\text{BD}^2 =\text{CB}^2 +\text{CD}^2 -2×\text{CB}×\text{CD}×\cos(180^\circ -\theta)\\
\end{cases}
とかける。ここで,$\cos(180^\circ -\theta)=-\cos\theta$であることを利用すると,
\begin{cases}
\text{BD}^2 =\text{AB}^2 +\text{AD}^2 -2×\text{AB}×\text{AD}×\cos\theta\\
\text{BD}^2 =\text{CB}^2 +\text{CD}^2 +2×\text{CB}×\text{CD}×\cos\theta\\
\end{cases}
とすることができるから,
$$\text{AB}^2 +\text{AD}^2 -2×\text{AB}×\text{AD}×\cos\theta=\text{CB}^2 +\text{CD}^2 +2×\text{CB}×\text{CD}×\cos\theta$$
となり,それぞれの長さを代入して計算を進めると,$\cos\theta=-\frac{1}{2}$を得る。よって,
$$\text{BD} ^2 =\text{AB}^2 +\text{AD}^2 -2×\text{AB}×\text{AD}×\cos\theta=3^2 +5^2 -2×3×5×(-\frac{1}{2})=49$$
となり,$\text{BD}=7$を得る。

この問題は教科書の例題にもよくあるレベルの問題で,受験生であればかなりの人が解けるレベルの問題です。

しかし解き方をただ覚えているだけでは,次の問題とこの問題が,実は全く同じテーマの問題であるということに気づくことができず,手を進めることができない状況に陥ってしまう可能性が非常に高いです。

 

過去問に取り組む前の練習問題2


次の問題を解いてみましょう。

$\triangle\text{ABC}$において,$\text{BC}$の中点を$\text{D}$とする。このとき,以下の関係式が成り立つことを示せ。$$\text{AB}^2 +\text{AC}^2 =2(\text{AD}^2 +\text{BD}^2 )$$

どうでしょうか。

初見ではなかなか手強いと思いますが,先ほどの問題からしっかりと重要事項を身につけていれば自然とゴールにたどり着きます。
詳しく話していこうと思います。

 

練習問題1で一番重要だったこと

実は問題1で一番重要なのは,

「円に内接する四角形の問題はこう解く」

ではなく,

「$\cos(180^\circ -\theta)=-\cos\theta$が成り立つこと」

なのです。

この関係式を利用することにより,「違う三角形で余弦定理の式を立てても,後のカタマリについている三角比が両方とも$\cos\theta$となり,とても処理しやすい形になる」ということこそ,この問題から学ぶべき事項なのです。

まとめると,$\theta$と$180^\circ -\theta$のペアを見つけたら,その2つの角度を用いて余弦定理の式を立てると結局きれいな関係式となり処理しやすくなるということです。

この類の問題群の中に,円に内接する四角形の問題が含まれているのです。
円に内接する四角形の内角には,$\theta$と$180^\circ -\theta$のペアが2組もありますから当然余弦定理の式を2本立ててみようかという話になるわけです。

問題2の解説

では今回の問題ではどうでしょうか。

$\theta$と$180^\circ -\theta$のペアは,円に内接する四角形にしか現れないわけではありません。
一直線上に並ぶ2つの角も,$\theta$と$180^\circ -\theta$のペアとなります。

ここに着目したものが以下の解答です。

$\theta=\angle\text{ADB}$とおくと,$\angle\text{ADC}=180^\circ -\theta$とかける。
$\triangle\text{ADB}$と$\triangle\text{ADC}$で余弦定理を用いると,
\begin{cases}
\text{AB}^2 =\text{AD}^2 + \text{BD}^2 -2×\text{AD} ×\text{BD} ×\cos\theta\\
\text{AC}^2 =\text{AD}^2 + \text{CD}^2 -2×\text{AD}
×\text{CD} ×\cos(180^\circ
-\theta)\\
\end{cases}
を得る。ここで,$\cos(180^\circ -\theta)=-\cos\theta$であることと,$\text{BD}=\text{CD}$であることを利用すると,
\begin{cases}
\text{AB}^2 =\text{AD}^2 + \text{BD}^2 -2×\text{AD}×\text{BD} ×\cos\theta\\
\text{AC}^2 =\text{AD}^2 + \text{BD}^2 +2×\text{AD}×\text{BD} ×\cos\theta\\
\end{cases}
とすることができる。辺々加えると,
$$\text{AB}^2 +\text{AC}^2 =2\text{AD}^2 +2\text{BD}^2$$
となり,右辺を2でくくることにより,
$$\text{AB}^2 +\text{AC}^2 =2(\text{AD}^2 +\text{BD}^2 )$$
を得る。

どうでしょうか。
ペアを見つけてしまった後はほとんど同じ計算でしたね。

もうこれらが異種の問題だと思う人はいないと思います。
しっかりとしたところに着目すると,見た目が全く違う問題でも同じような考え方でしっかりと解くことができるようになります。

ちなみにこの問題で証明した等式は中線定理と呼ばれており,非常に有名な結果です。
覚えていれば使っても大丈夫です。

実際の入試問題を解いてみる

では最後に,実際の入試問題を見てみましょう。

三角すい$\text{ABCD}$において辺$\text{CD}$は底面$\text{ABC}$に垂直である。$\text{AB}=3$で,辺$\text{AB}$上の2点$\text{E}, \text{F}$は,$\text{AE}=\text{EF}=\text{FB}=1$をみたし,$\angle\text{DAC}=30^\circ, \angle\text{DEC}=45^\circ, \angle\text{DBC}=60^\circ$である。
(1)辺$\text{CD}$の長さを求めよ。
(2)$\theta=\angle\text{DFC}$とおくとき,$\cos\theta$を求めよ。

入試問題(1)の解説

まずは$x=\text{CD}$とおいてみましょう。
すると,$\angle\rm DAC =30^\circ ,\angle\rm DEC =45^\circ ,\angle\rm DBC =60^\circ$であることと辺$\text{CD}$が底面$\text{ABC}$に垂直であることから,
$$\text{DA}=2x, \text{DE}=\sqrt{2x}, \text{DB}=\frac{2}{\sqrt{3}}x$$
とわかります。

何か関係式を1本立てることができれば$x$が求まりそうです。
ここで,$\triangle\rm DAB$に着目してみましょう。
何かできそうなことはないでしょうか。

ここまで来るともう簡単に気づくかもしれません。
$\angle\text{DEA}$と$\angle\text{DEB}$が$\theta$と$180^\circ -\theta$のペアになっているわけです。
これは余弦定理を使わざるを得ないですね(笑)。

$\theta=\angle\rm DEA$とおくと,$\angle\rm DEB =180^\circ -\theta$である。
$\triangle\text{DEA}$と$\triangle\text{DEB}$で余弦定理を用いると,
\begin{cases}
\text{DA}^2 =\text{DE}^2 + \text{AE}^2 -2×\text{DE}×\text{AE} ×\cos\theta\\
\text{DB}^2 =\text{DE}^2 + \text{BE}^2 -2×\text{DE}×\text{BE}×\cos(180^\circ -\theta)\\
\end{cases}を得る。これらに既知の情報を代入すると,
\begin{cases}
(2x)^2 =(\sqrt{2x})^2 +1^2 -2×\sqrt{2x}×1×\cos\theta\\
(\frac{2}{\sqrt{3}}x)^2 =(\sqrt{2x})^2 +2^2 +2×\sqrt{2x}×2×\cos\theta\\
\end{cases}整理して,\begin{cases}
2x^2 =1-2\sqrt{2x}\cos\theta\\
-\frac{2}{3}x^2 =4+4\sqrt{2x}\cos\theta\\
\end{cases}
$\cos\theta$を消去して,$\frac{10}{3}x^2
=6$となり,$\text{CD}=\frac{3}{\sqrt{5}}=\frac{3\sqrt{5}}{5}$を得る。

入試問題(2)の解説

ここまで来るともうおまけです。
$\triangle\rm DEB$に着目すると,問題2で証明した中線定理が使えそうです。

中線定理を用いると,
$$\text{DE}^2 +\text{DB}^2 =2(\text{DF}^2 +\text{EF} ^2)$$
となり,この式から,$\text{DE}^2 =\frac{5}{3}x^2 -1=2$を得る。
よって$\rm DF =\sqrt{2}$とわかる。
あとは$\triangle\rm DFC$に着目して,
$$\sin\theta=\frac{\text{DF}}{\text{CD}}=\frac{3}{\sqrt{10}}$$
とわかるから,ここから$\cos\theta=\frac{1}{\sqrt{10}}$を得る。

(1)で中線定理の証明の仕組みが分かっているかどうかを確認し,分かっているようであれば(2)で中線定理を使って楽してもいいよ,というメッセージが聞こえてきそうな問題でしたね。

まとめ

以上のように,入試問題というのは必ず基礎からの応用になっています。

普段からしっかりとした視点を持って勉強していくと,効率よく入試問題を解く力をつけていくことができます。

今回の題材はあくまで一例です。
普段の勉強の参考にしてみてください。

では今回はこの辺で失礼します。
また次の記事でお会いしましょう。

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