[ブックレビュー]宮下洋一『安楽死を遂げるまで』

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人は自らの人生の最後を自分で決める権利を持つのか。
誰にも訪れる「死」に対し、どのような対処をするのが理想なのか。
終末医療のあり方に目を向ける中で、避けては通れないのが「安楽死」というテーマである。

一言で「安楽死」と言ってもその種類は

①医師が薬物を投与して行われる「積極的安楽死」
②医師が与えた致死薬を用い、患者自らの手で行う「自殺幇助」
③延命措置を控えたり中止したりする「消極的安楽死」
④緩和ケア用の薬物が結果的に死をもたらす「セデーション」

のように分類されるという(本書p16.凡例による)。

世界を見渡してみれば、スイスやオランダを始めとするいくつかの国や地域で——その方法に制限があるとはいえ——「安楽死」を認める地域が存在する一方、日本においては、患者に筋弛緩剤を投与してしに至らしめるという所謂「安楽死」を行った医師が有罪判決を受けるなど、
安楽死は違法性を伴うものであり、また、安楽死に対する世間の見方も冷たいように思う。

本書では、スイス、オランダ、ベルギー、アメリカ・オレゴン州、スペイン等での所謂「安楽死」をめぐる取材を通して著者が目にしたものを、著者自身の葛藤とともに丁寧に描き出す。

エピローグの中で著者が

「本書では様々な安楽死事例を紹介し、私がどう感じたかも綴っている。しかし、その考えを読者に押しつける気持ちはない。」

と述べるその言葉通り、著者が目にした事例が事細かに紹介されているものの、読者に対して安楽死の賛否について、著者の抱いた考えを押し付けるかのような記述はなく、それでいて自然と「死」や「安楽死」について(是非に止まらず)思考を巡らせている自分に気づく。

我々にとって死は身近なものでありながら、そのあり方について考える機会は案外少ないのかもしれない。

安楽死とはどのような行為なのか、安楽死は認められるべきものなのか、幸福な人生の幕切れとは一体何か、そもそも死のあり方を我々は選択することができるのか——

その答えは人によって異なるだろうし、そもそも結論など出ないのかもしれない。
とはいえ、一度立ち止まってこれらの問いに深く思いを巡らせることは今の我々に必要なことなのではなかろうか。その入り口として必読の良書。


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