漢文を担当する安田です。よろしくお願いします。
今回は、受験生に向けて漢文学習の道筋をご紹介できればと思います。
漢文は大学入学共通テストのみで使う人が多いと思いますので、その対策を基本線としつつ、国公立2次試験や私大の入試で使うという人にもプラスアルファでお伝えしていきます。
目次
漢文学習のスタートアップ
「句法を覚えなさい」と言われたことはありませんか?
句法とは漢文における文法だと思ってもらえれば分かると思います。
英語でも古文でも文法を学びますから、基本的にはその要領です。
文の構造を理解し、漢字とその読み方から意味を考える
漢文の句法を学習するのは基礎学習でとても大切な部分です。
しかし、漢文学習でそれ以上に重要なのは「文の構造を理解し、漢字とその読み方から意味を考える」という点です。
英語の5文型と同じように、漢文にも基本の文構造というものがあります。
まずそれらを理解することに力を注ぎましょう(ほとんどの教材に載っているはずです)。
また、漢字は形やパーツによって意味を内包することの多い文字ですから、文字そのものや読み方が意味を示すことも多々あります。
小中学校で習った読み方ひとつでもヒントになることがありますから、漢字の読み書きを学習することは漢文にもたいへん有効です。
漢文の年間学習イメージ
まずは、4~1月までを大きく3つに分け、それぞれ
①基礎養成期
②読解力養成期
③過去問演習期
として、それぞれの時期でなにをやればよいか、イメージを作ってもらえればと思います。
漢文は、科目の優先度的にどうしても後回しにしてしまう科目だと思いますが、直前で慌てないためにも、ちょっとの時間で少しずつ、早いうちから固めていくと、あとあと慌てずに自分の主力科目に打ち込むこともできます。
言語は日々の積み重ねを意識しましょう。
[4〜7月]基礎養成期の漢文学習
いざ受験に向けて漢文を勉強しようと思うと、どこから手をつけていいか分からなくなるものです。まず、ひと通りの基礎事項を理解し、覚えていきましょう。
・返り点と送りがなから、書き下し文を書けるようにする。
・書き下し文を見て自分で返り点と送りがなを振れるようにする。
・熟語の構成、漢文の文構造(英語の5文型のようなもの)を理解する。
・代表的な句法を使えるようにする。
以上3点を、完璧でなくとも、できる限り7月までの間にひと通り学習しておきたいです。
読むだけでなく、実際に書きながら練習できる教材を是非使ってください。
この時期の漢文学習におすすめの教材は以下の3冊です。
新・漢文の基本ノート(日栄社)
ステップアップノート10(河合出版)
基礎からのジャンプアップノート 漢文句法・演習ドリル(旺文社)
大切なのは、漢字の読みと意味を常に考えながら、ただの作業にならないよう、「どういう意味だろうか?」「何を言っているのだろうか?」と考えながら取り組むことです。
[8〜10月]読解力養成期の漢文学習
これまで学校の教科書で扱ってきた文章などを使って、「しっかり音読できるか」「現代語訳ができるか」を確認してみてください。
一度学習した文章でも、案外読めない・意味が取れないという部分は出てくるはずです。
疑問点や不明点は身近な先生に質問してきっちり潰してください。
また、これまで受験した模試の問題も活用しましょう。
丁寧な解説や現代語訳があるはずですから、同じように復習し、一字一句を照らし合わせて確認していきます。
他の科目に多少余裕が出てきた人は、マーク型の実戦問題を少し取り入れていってもOKです。
共通テスト以外で漢文が必要な人は読解練習も
共通テスト以外で漢文が必要な人は上記に加え、この時期に+αで読解練習を入れていくといいです。
漢文道場(Z会出版)
入試精選問題集 漢文(河合出版)
また、基礎をひと通り固めた後、早いうちに志望校の過去問に触れておきましょう(触れるだけでいいです)。
難易度や形式をつかんでおくのは大切です。
記述問題がある場合はこちらの教材で対策するのもありです。
得点奪取漢文(河合出版)
[11月〜]漢文の過去問演習
センター試験や共通テストの過去問を中心に演習しましょう。
ただ問題を解くだけでなく、誤答の選択肢は何が違うのか、というのを全て突き詰めていくのが大事です。
音読してみましょう。
訳してみましょう。
市販されている過去問や実戦問題集は、書き下し文や現代語訳まで丁寧に書いてくれています。
ひとつひとつを確認しながら取り組むことで、知識も増え、「読める」「解ける」ようになってきます。
共通テスト以外でも漢文が必要な場合、冬休みからは共通テストの直前対策で手一杯でしょうから、11月末までの段階で志望校に向けた演習をしておき、共通テスト後に追い込みをかける感じで進めていくといいかと思います。
高1・2生の漢文学習
慌てず騒がず、まず土台作りをしっかりとやりましょう。
普段の学校の授業できちんと予習・復習をする。
暗唱できるくらいまでスラスラ音読練習をする。
自分で白文を書いて返り点や送りがなを振る練習をしてみる。
漢文は一つの文章がそこまで長いわけではありませんから、わずか10分程度の手間をかけるだけでも力がつきます。
本格的に受験勉強に入る前に、文構造の理解と基本的な句法は押さえたいですね。
あとは、現代文の対策も兼ねて、漢字の読み書きを強化しましょう。
おわりに
漢文はどうしても後に回しがちになる科目です。
ただし、覚えるべき量はさほどでもなく、勉強次第では点数を確保しやすい科目でもあります。
漢文は中国語にして中国語に非ざるものです。
昔の日本人は、中国語を知らない人でも東アジア最先端の文化・知識を受容するための手法として、返り点・送りがなを用いて「訓読」するという技術を生み出しました。
漢文を学習することで、古来から続く言語へ取り組む意識や姿勢、技術を学ぶことができます。
文章に対して文法を意識して真摯に取り組むという点では、現代文や古文はもちろん、英語にも通じますし、他の言語を学ぶ上でも土台としてこれからのあなたを支えてくれるはずです。
今後も有為な情報をお伝えできればと思いますので、よろしくお願いします。
個別学習塾寺子屋はじめ塾長。
漢文を専門としつつも受験勉強のトータルプロデュースを行い、大学進学後を見据えた指導を行っている。
全国の大学受験生向けに国語のオンライン個別指導も行っており、難関国公立大の国語や医療系小論文の添削指導には特に定評がある。