カテゴリー:[連載小説]像に溺れる

  • #14 抽象と具体の接点――像に溺れる

    電車に乗っている間に、ぼくはポジティブな像を一つ作り出そうと思ったのだけれど、ポジティブな人間がよく使う言葉がなかなか思いつかない。 友だち、元気……そうした言葉ではネガティブな書き込みも抽出してしまう。 嬉しい、楽…
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  • #13 標本としての像――像に溺れる

    サイコロを5回続けて振った時、3以上の目が2回以上起きる確率について、数学の後藤先生が解説している。 「こんなことやって何になるんだって思ってるでしょう?」 反復試行の公式を黒板に書き出しながら、独り言ちるように後藤…
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  • #12 脱色と脱臭――像に溺れる

    夕飯を食べにリビングに行くと、950円の牛ステーキ弁当が机に置いてあった。 ぼくは椅子に座り、冷たいままの牛肉を口に運ぶ。 電子レンジが嫌いだった。待っている時間、自分が養分を待ちわびる卑しい食肉植物になったみた…
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  • #11 作られた像――像に溺れる

    ふと思い立って、検索欄で「生きる意味」と入力してみる。 死にたいけど死ねない。こんな風になっても、生きる意味を探してしまう。 悠くんとのつながり。それだけが私の生きる意味。 生きる意味なんて、わからなくていい。みん…
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  • #10 SNSの亡霊――像に溺れる

    五時間目開始のチャイムが鳴っても、ぼくはそこを動く気になれなかった。 鼻腔にはまだ、煙たいバニラの粒子が残っている気がする。 オレンジのパーマといい、妖しいバニラの香水といい、彼女の像はぼくに受け止めきれないほどのリ…
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  • #9 空虚な像――像に溺れる

    昼休みの教室が苦手で、いつも四時間目のチャイムと同時に教室から抜け出している。 弁当のにおいが入り混じって、それだけでも気分のいいものではないのに、そんな中で参考書に見入ってるやつもいて、さまざまな活動の境界線がな…
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  • #8 淘汰されるべきもの――像に溺れる

    ぼくはぼくの像が、現実に他人の思考の中心点として機能する可能性について想像した。 それはきっと気分がいいものだろうと思われた。 ぼくはスマホのインカメラで自分の顔を映してみる。 見慣れているはずの自分の顔に、あ…
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  • #7 像の交錯――像に溺れる

    雨を含んだ重たい雲がにわかに現れ、熱をもった地表に蓋をし、余熱で地上を蒸し上げようとしていた。校門を出ると、水分を含んだ土のにおいと下水の腐臭が入り混じり、篭もったような濃密さでぼくの鼻腔に入りこんでくる。左手に蘇る、死…
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  • #6 注釈を加えているもの――像に溺れる

    ヤナガワサンが停学処分となってからも、ぼくの頭は彼女のオレンジのパーマで占められ続けていた。それはあまりに鮮明なイメージとして焼き付いていたので、ぼくは目の前の空席に、おのずとその姿を映し出してしまうのだった。 現…
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  • #5 内面世界による救済――像に溺れる

    像には「内側」が存在しない。像はいかなる意思も記憶も所持することがない、単なるデータの塊として存在している。それらはゲームのグラフィックのように、コードによって操作可能なものだ。この像の世界では、ぼくの扱えるコード、すな…
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