こんにちは。
数学講師の大塚志喜です。
今回の記事では,数学の難問を攻略する思考法についてお話ししていこうと思います。
「教科書や学校の問題集の問題は解けるけれど,模擬試験や入試問題では手が止まってしまう」という受験生は少なくないはずです。
そのような問題に対してどのように思考していくかについて考えていこうと思います。
なお,今回の「難問」とは,「今まさに問題を解いている人にとって,見たことがなく,かといって何をしたらいいかよく分からず手が止まってしまっている問題」のことであるとします。
目次
数学ⅠAの難問に対処するためには「意識改革」が重要
数学ⅠAの問題を解いているときに手が止まること自体に必ずしも問題があるわけではありません。
当然,その時点でその問題を解くだけの実力がなければ手は止まって当たり前です。
では何が問題なのかというと,その「実力」について誤った認識を持っている場合です。
具体的に言うと,「こんな問題見たことがない。解き方を知らない」や「似たような問題を見たことがある気がする。どうやって解くんだっけ?」といった理由で立ち止まっている場合です。
これらはそもそも数学の学習法を根本的に勘違いしてしまっている場合があります。
数学は,全ての問題の解法を覚えきることは不可能です。
「とにかく解き方を覚えてそれを解答用紙に書き並べる」という考えでは,必ずどこかで壁にぶつかります。
どこかでその方針を変える場面が必要です。
ある程度のレベルまでは「知識」が鍵
覚えることを否定するつもりは全くありません。
ある程度のレベルまでは思考力よりも知識の方が圧倒的に大切です。
用語や記号を知らなければ問題の意味が分かりませんし,有名な問題を解くときに全て定義から出発していたら時間がいくらあっても足りません。
その知識をつける段階が「教科書や学校の問題集のレベルの問題を解いているとき」なのです。
大切なのは「その知識をどのように使っていくか」を考えられること
知識は「知っている」内容に過ぎません。
大切なのは,「その知識をどうやって初見の問題に使うか」を自分一人で考えられるようになることです。
思い出すことに精一杯なうちは難問を解けるようにはなりません。
まずは意識改革が大切です。
数学ⅠAで「この問題は難しい」と感じる原因3選
次に,具体的な方法について考えていきたいと思います。
まず,この問題は難しいと感じる原因について考えてみましょう。
次のような場合が多いのではないでしょうか。
• 計算が煩雑である
• 文字の種類が多い
• みたことのない形の問題である
それぞれ見ていきましょう。
煩雑な計算に対処するためには計算練習が必要
まずは「煩雑な計算」です。
煩雑な計算を克服するためには計算練習を普段からしっかりとして,ごちゃごちゃした計算でも最後まで行えるパワーをつけなければなりません。
計算に関しては「高校数学で必要な計算力をつけるために今すぐ取り組みたい問題集と学習法」で詳しく紹介しています。
そちらを読んでみてください。
文字の種類が多い問題は、具体例に触れてみる
次に,「文字の種類が多い問題」についてです。
2 次関数や確率に多いですね。
このような場合は,文字の計算に入る前に具体例に触れてみるのが強力です。
例えば確率の問題で$n$ 個の玉や$k$ 番目など,問題設定に文字が入っているときに「例えば$n = 5,k = 3$として,玉が$5$ 個,$3$番目を考えてみると……」など,具体的な数字にしてみると難易度がガクッと下がります。
文字なんてものは所詮数値です。
具体的な数値で計算してみることで「同じように$n$や$k$でもできるはず」と考え,その問題が解けるようになることは多いです。
具体化は強力な理解の手助けになりますので,ぜひ試してみてください。
見たことのない形の問題に対する3つの対処法
最後に,「見たことのない形の問題」に出会ったときの対処法です。
これが一番の壁になると思うのですが,やはり大事な考え方がいくつかあります。
思い出そうとしないこと
まずは「思い出そうとしない」ことです。
見たことがない問題なのですから,そもそも思い出せません。
その考えを捨ててください。
問題文の設定を正確に読み取る
次に,問題文の設定を正確に読み取ることです。
「見たことがないから分からない」
ではなく,
「見たことがない。一体どんな設定になっていて,何を聞かれているんだ?」
と,まずは問題がどのような設定で,自分に何を聞いているのかを掴むことが重要です。
何を聞かれているのか分からなかったり,前提条件を把握していなかったりしたら解けるわけがありません。
しっかりと「読解」しましょう。
解けなかった時を大切にする「合理的な理由」を自分のものにする
最後に,その問題をどう解くかですが,これについては一般論などありません。
難問に出会うたびに色々な解決方法や考え方があります。
じっくり考えて解ければいいのですが,大切なのは解けなかったときです。
答えを見るときに大切にしてほしいことがあります。
「こうやって解くんだ」と解き方に感心してほしくはないのです。
「合理的な理由」を自分のものにする
大切なのは,「こうやって解くんだ。どうしてこう解こうと思ったんだろう」と,その解き方に至る「合理的な理由」に納得することです。
その問題の解き方自体を身につけることも大切ですが,これから先に難問に挑戦できる能力を一番鍛えるのが「なぜそうしたか」を自分のものにすることです。
合理的な理由のストックが増えれば増えるほど,見たことのない問題に出会ったときに自分で合理的な理由を持って解答に近づける可能性が上がっていきます。
大学入試では,問題が違っても「どう問題を読み,どうその問題を解きほぐしていくか」の方針はそこまで多様ではありません。
合格点をしっかり取る程度の目標であれば,そのような意識で1 問1 問を丁寧に理解していくことで力がついていきます。
「なぜ」を絶対に忘れないでください。
おわりに
今回の記事はいかがだったでしょうか。
一番大切なのは「なぜ」を正しい方向に向けることです。
模範解答の理解は当然として,その模範解答に至る必然性を身につけることこそが,初見の問題に対する一番の勉強法だと僕は思っています。
ただ単に解法を覚える勉強法だけではなく,「なぜそうしたのか」を大切にする勉強法にも目を向けてみてください。
では今回はこの辺で失礼します。
また次の記事でお会いしましょう。
首都圏、西日本の大手予備校に出講。
単なる解法の暗記→再現に留まらず、なぜそう解くのか、どうしてそう解こうと思えるのかまでを徹底講義。「数学をやらされている」ではなく「自分たちが数学をやっているんだ」という授業を展開。