化政文化の基本情報
政治史的理解:大御所時代
中心人物:11代将軍徳川家斉
外交史的理解:列強の接近・洋学の発達
仏教史的理解:民衆生活との結びつき→縁日や開帳
化政文化とは「文化・文政期」の意で、宝暦・天明期の文化が寛政の改革で弾圧されたあと、徳川家斉の治世のもとで息を吹き返した時期の文化です。
宝暦・天明期と同様、江戸を中心とした文化ではありますが、その担い手が異なります。
▼宝暦・天明期の記事はコチラ
宝暦・天明期では商業資本の発達を背景に、裕福な百姓や町人などが担い手でした。
これが化政文化になると、江戸、そして大坂・京都を含む三都のさらなる繁栄から民衆をも担い手として取り込んだ大衆文化が成立することとなります。
この担い手の変化に注目すれば、宝暦・天明期と化政文化でそれぞれどのような作品が「流行る」かが理解でき、「流れ」をつかみやすくなります。
化政文化の美術
さて、今日も美術から見ていきましょう。
錦絵では以下の作品が知られています。
・葛飾北斎:『凱風快晴(赤富士)』『神奈川沖浪裏』など『富嶽三十六景』
・歌川(安藤)広重:『東海道五十三次』『江戸名所百景』
化政期は民衆の旅が一般化したこともあり、このような風景を描いた錦絵が普及しました。
『富嶽三十六景』
葛飾北斎の『富嶽三十六景』は、「三十六景」というくらいですから、全部で36枚……
では実はなくて、全部で46枚あります。
当初は36枚で1シリーズとして出版されていたのですが、売れ行きが好調なため「裏富士」(裏不二)の10枚が追加されたのだとか。
『東海道五十三次』
それと、『東海道五十三次』も53枚、ではありません!
そもそも東海道「五十三次」とは五街道の一つ、東海道(江戸・日本橋―京都・三条大橋)の53宿のこと。
宿場町の数が53なので、いわば「途中駅」の数、つまり「始発」と「終着」が入っていないんですね。
ですので、『東海道五十三次』は53宿に江戸の日本橋と京都の三条大橋という起終点を加えて55枚で完結ということなのです。
『富嶽三十六景』にしても『東海道五十三次』にしても、タイトルに惑わされないようにしましょうね!
美術ではほかに、渡辺崋山が蘭学を通して交流のあった下総古河藩家老を描いた『鷹見泉石像』などの文人画や松村月溪(呉春)などによる写生画、松平定信に仕えて『浅間山図屏風』などを描いた洋風画の亜欧堂田善などを押さえておきましょう。
化政文化の文学
さて、宝暦・天明期には洒落本・黄表紙・読本が隆盛したことを前回申し上げました。
このうち、洒落本・黄表紙は寛政の改革で弾圧を受けます。
▼寛政の改革についてはコチラ
その後、登場したのが人情本・合巻です。
人情本
代表的人物は為永春水。
宝暦・天明期の文化で取り上げた洒落本が主に「遊里」での男女の愛欲を取り上げていたのに対し、人情本は江戸町人の「町」での恋愛事情を描いています。為永春水の『春色梅児誉美(暦)』には色男・丹次郎も登場し、女性読者も獲得していきます。
こうしてみることで、文化の担い手が変化したことも納得できますよね。
合巻
代表的人物は柳亭種彦。
黄表紙が長編化し、これを合冊としたのが合巻です。
代表的人物である柳亭種彦は、『源氏物語』のパロディとして大奥の実情を『偐紫田舎源氏』で描きます。
その後、為永春水の『春色梅児誉美(暦)』と柳亭種彦の『偐紫田舎源氏』はそれぞれ天保の改革で弾圧され、絶版となります。
▼天保の改革についてはコチラ
文学についてはほかに、保元の乱で(椿で有名な)大島に流された源為朝を描いた曲亭馬琴の『椿説弓張月』や同じく曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』などの読本、信濃出身の小林一茶による『おらが春』などの俳諧、『菅江真澄遊覧記』や鈴木牧之『北越雪譜』などをチェックしておきましょう。
▼化政文化について詳しくはコチラ
次回は江戸時代の学問・思想を概観してみましょう!
それではまた!
日本史科予備校講師。学びエイド認定鉄人講師。
首都圏の予備校を中心に出講し、その講義は「するする頭に入ってくる」「勉強しなきゃと意識が変わる」「出てきた土地に興味が湧く」と受験生に高い支持を得ている。
授業のコンセプトは「大学に行くのが楽しみになる授業」。
科目の内容はもちろんのこと、丸暗記のみに頼らない本番での知識の導き方・解き方、現場に足を運んで得た知見などをもとに大学に行っても役に立つ「受験科目」を展開。
受験生におくる言葉は「一生勉強、何のこれしき。」
「佐京由悠の日本文化史重要ポイント」
第1回 初の仏教文化、飛鳥文化
第2回 国家仏教の形成と白鳳文化
第3回 鎮護国家思想と天平文化
第4回 弘仁・貞観文化
第5回 国風文化(前編)
第6回 国風文化(後編)
第7回 院政期の文化
第8回 鎌倉文化(前編)
第9回 鎌倉文化(後編)
第10回 室町文化(前編)
第11回 室町文化(後編)
第12回 桃山文化
第13回 寛永期の文化
第14回 元禄文化
第15回 宝暦・天明期の文化
第16回 化政文化