室町文化(前編)――佐京由悠の日本文化史重要ポイント

受験生の皆さま、お疲れ様でございます。
日本史科の佐京でございます。

今日は日本文化史の第10回、室町文化の前編。
前編の今日は、南北朝の動乱期を背景とした「南北朝文化」、そして室町幕府3代将軍足利義満の時代を中心とした「北山文化」を中心にお届けいたします!

まずはいつものようにキホン情報の整理から。

室町文化の基本情報

☆キホン情報の整理
時期:14世紀
政治史的理解:南北朝の動乱と足利義満の治世
中心人物:二条良基(南北朝)・足利義満(北山)
外交史的理解:日明貿易
仏教史的理解:五山十刹の制による保護・統制(北山)
・中心寺院→金閣

 

室町文化の仏教

さて、仏教です。

南北朝期には後醍醐天皇足利尊氏・直義の帰依を受けた夢窓疎石が出ます。
この夢窓疎石が尊氏の帰依を受けて以来、臨済宗は室町幕府により手厚く保護され、また統制されていくこととなります。

Point 夢窓疎石(1275-1351)
後醍醐天皇、足利尊氏・直義の帰依を受ける。
天龍寺の創建や、国ごとに安国寺・利生塔の建立を尊氏・直義兄弟に勧めた他、西芳寺(苔寺)の作庭でも知られる。

そして室町幕府は、京都五山・鎌倉五山として臨済宗の保護・統制策を進めていきます。

臨済宗というのは、禅宗の一つですね。
鎌倉文化の前編の記事でお伝えしたように、臨済宗は曹洞宗と違って、「権力との結びつきが強い」のでした。
*鎌倉文化(前編)の記事はコチラ

Point 京都五山・鎌倉五山
京都五山鎌倉五山
南禅寺:別格上位
天龍寺:五山の一建長寺:五山の一
相国寺:五山の二円覚寺:五山の二
建仁寺:五山の三寿福寺:五山の三
東福寺:五山の四浄智寺:五山の四
万寿寺:五山の五浄妙寺:五山の五

え、京都「五」山なのに6個あるやん、てね。

一番上の南禅寺は「別格上位」なんです。

もともとの京都五山は南禅寺・天龍寺・建仁寺・東福寺・万寿寺だったのですけれど、足利義満が相国寺を建立した際、この相国寺を五山の二位に挿入することとなり、五山筆頭であった南禅寺が玉突きで別格上位となったのであります。

ちなみにこの相国寺の「相国」とは国を治める、の意。
なるほど、内閣総理大臣のことを首「相」とか言いますもんね。
相国寺は創建した足利義満が当時左大臣(=左相国)であったことからこう呼ばれます。

相国寺には禅僧の管理を行う僧録司という機関を置き、初代僧録は夢窓疎石の甥である春屋妙葩が勤めました。

 

室町文化の思想・学問・文学

まず外せないのが『神皇正統記』でしょう。

Point 『神皇正統記』
北畠親房が常陸国小田城で北朝側と対戦しながら執筆した歴史書。
「大日本は神国なり」で始まり、南朝の正当性を主張。
鎌倉幕府を肯定、承久の乱を批判している。後醍醐天皇の子、後村上天皇に献上した。

そして文学では、中心人物でも紹介した二条良基による『応安新式』『菟玖波集』がでます。

『応安新式』は連歌の規則書、『菟玖波集』は連歌集です。
「式」は方法・方式→規則書、「集」→連歌集と整理しておきましょう。

 

室町文化の芸能

芸能では能楽闘茶・茶寄合をおさえましょう。

Point 能楽
猿楽(寺社の祭礼に奉納する滑稽芸)と田楽(農耕儀礼)が結びつき、観阿弥・世阿弥父子が完成させた芸術。
この能楽の幕間に上演されるのが、滑稽や風刺を主体とした対話劇である狂言。

Point 闘茶
産地の異なる数種類の茶を飲み、味を飲み分ける競技。京都の栂尾茶とそれ以外について飲み分けることに始まる。

産地の異なる数種類の茶の味を飲み分ける・・・ズズッ・・・むむ、これは・・・静岡!みたいな。
いやおもろいか?これ。汗

実はこの「闘茶」を超エキサイティングにする要素があるんです。
どんな要素を足したら、面白くなるでしょうか。

……そうです。「賭け」るんです。こうして闘茶は賭博性を帯びていきます。

この闘茶を含め、酒食を楽しむ娯楽的なお茶会のことを茶寄合といいます。
これが次回扱う東山文化では「侘び茶」へと変化していくのです。

 

室町文化の美術

建築――金閣

建築においては金閣を押さえましょう。

金閣についてはついこの間こちらのEducational Loungeで記事が公開されましたので、ぜひチェックしてくださいね。
*金閣について詳しくはコチラ

そもそも北山文化の「北山」とは、金閣の所在する京都北山からきています。
金閣がこの時代の文化の代表格であることがわかりますね。

 

絵画――水墨画の流行

絵画では、墨の濃淡やにじみ、広がりによって情景を表現する水墨画が流行します。
水墨画については東山文化でまとめて取り扱いますね。

 

庭園――池泉回遊式庭園

庭園は池泉回遊式庭園を押さえましょう。
池泉回遊式庭園とは、池や滝などをつくり、その周りを鑑賞しながら歩行できる庭園です。

先ほど登場した夢窓疎石も、天龍寺西芳寺の作庭に関わったとされています。

池泉回遊式庭園は、のびやかな自然をそのまま利用し、広大な面積を要します。
そして、のびやかな自然を「そのまま」利用するからこそ、季節によってその表情を変えます。

なるほど、常に変化する、諸行無常
仏教的なお庭ですね。

この池泉回遊式庭園と、次回扱う枯山水の庭園、比較をしながら勉強すると室町文化の特質がつかみやすいのでぜひ、次回も楽しみにしていてくださいね!

それでは今日はこの辺で。

北山文化について詳しくはコチラ

〔画像:京都フリー写真素材


「佐京由悠の日本文化史重要ポイント」
第1回 初の仏教文化、飛鳥文化
第2回 国家仏教の形成と白鳳文化
第3回 鎮護国家思想と天平文化
第4回 弘仁・貞観文化
第5回 国風文化(前編)
第6回 国風文化(後編)
第7回 院政期の文化
第8回 鎌倉文化(前編)
第9回 鎌倉文化(後編)
第10回 室町文化(前編)

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