鎌倉文化(前編)――佐京由悠の日本文化史重要ポイント

受験生の皆さま、お疲れ様でございます。日本史科の佐京でございます。
今日取り上げるのは鎌倉時代の鎌倉文化です。
まずはいつものようにキホン情報の整理から!

鎌倉文化の基本情報

☆キホン情報の整理
時期:13世紀中心
政治史的理解:鎌倉幕府の成立
中心人物:法然・栄西・日蓮など「鎌倉新仏教」の開祖たち
外交史的理解:宋や元との私貿易
仏教史的理解:鎌倉新仏教の成立と旧仏教の革新
・中心寺院→再建された東大寺

さて、前回は中世最初の「院政期の文化」を取り上げました。
*院政期の文化についてはコチラ

仏教では「国風文化」に引き続き浄土教を中心とした展開をみてまいりましたが、鎌倉時代になるとまた大きく仏教界に変化が訪れます。

そもそも仏教は殺生を禁じますが、本格的な武家政権=鎌倉幕府が誕生した鎌倉時代には武士に受容されるためにはそうもいっていられず、変化を迫られるのです。

前編の今回は「仏教」、特に鎌倉仏教をみていきましょう。

鎌倉文化の仏教

武士の台頭や源平争乱による社会不安の増大を背景に、鎌倉仏教と呼ばれる各宗派が徐々に生まれていきます。

注意しておいていただきたいのが、鎌倉仏教は鎌倉時代の幕開けと共に突然大流行し、突然仏教の主流になった、わけではない、ということです。

これから6人の開祖・宗派を紹介しますが、世代はそれぞれ異なります。
勉強するときは、彼らはどの世代、鎌倉時代のどの時期に活躍したのかを注意しましょう。

 

鎌倉仏教の概要

鎌倉仏教に共通する特徴は「易行/選択/専修」。
すなわち、「厳しい修行ではない/救済方法をただ一つ選ぶ/ひたすらに打ち込む」ということです。

そしてこの特徴は、奈良仏教のようなムズカシイ教義を知ることも、密教のような厳しい修行・貴族仏教としての経済力も必要なく、鎌倉新仏教が武士や一般庶民への広がりを見せていく前提ともなります。

 

各宗派の特徴

まず、鎌倉新仏教、全部で6宗派存在しますが、これをその修行法に注目してグループ分けしてみましょう。

グループ①「念仏」系:浄土宗・浄土真宗・時宗
グループ② 「禅」 系:臨済宗・曹洞宗
グループ③「題目」系:日蓮(法華)宗

となります。

 

「念仏」系(浄土宗・浄土真宗・時宗)

まず「念仏」とは「心に仏を念じること」を指しますが、ここで言及する「念仏」とは、「口称念仏」すなわち「南無阿弥陀仏」と唱えることを指します。

南無」は「帰依します」の意。
その対象が「阿弥陀仏」であることを意味します。
阿弥陀仏は極楽浄土にいる仏、その阿弥陀仏に帰依するので「浄土宗」や「浄土真宗」なのです。

この念仏を修行のメインとしたのが①念仏系で、法然浄土宗、その弟子の親鸞による浄土真宗、そして全国各地を廻り(遊行)念仏を広めた一遍による時宗じしゅうです。

 

「禅」系(臨済宗・曹洞宗)

」とは瞑想すること。その具体的な実践方法として「坐禅」があります。
この坐禅に注目したのがこのグループです。

まずは栄西による臨済宗

栄西は比叡山天台を学んだあと2度にわたり入宋しています。
帰国後に北条政子の寄進により鎌倉寿福寺源頼家の寄進により京都建仁寺を建立しました。

この二人からの「帰依」を受けたことからもわかるように、臨済宗はこのあと見る曹洞宗よりも「権力との結びつきが強い」と意識しておきましょう。

曹洞宗を開いた道元は栄西の門下でして、宋から帰国後、越前に寺を開きます。
これがのちの永平寺です。

坐禅そのものを重視し、ただひたすらに坐禅に打ち込むこと(只管打坐)をときます。
また、俗界との交渉を嫌いますから、臨済宗とは異なり権力と距離をとります

 

「題目」系(日蓮宗)

題目」とは、本来はタイトルを意味しますが、ここでは「南無妙法蓮華経」と唱えることを指します。
題目は「南無」=帰依する対象を「妙法蓮華経」すなわち法華経としています。

法華経といえば、「聖徳太子」の三経義疏や奈良時代、鎮護国家思想のもとで建立された国分尼寺に配置されたことでも知られていますね。
そして法華経は天台宗の根本聖典でもあります。

日蓮は自らを末法の大導師と位置づけ、国難の到来を予言するなどしながら、「辻説法」と呼ばれる布教方法で教線を拡大していきました。
そのなかでも他宗を激しく批判し、北条時頼『立正安国論』を提出してこれが伊豆配流の一因となりました。

さて、こうした鎌倉仏教の興隆の一方、旧仏教側の革新も始まりました。
次回はその旧仏教の革新と、建築や絵画など美術分野を見ていくことにいたしましょう!

*鎌倉仏教について詳しくはコチラ


「佐京由悠の日本文化史重要ポイント」
第1回 初の仏教文化、飛鳥文化
第2回 国家仏教の形成と白鳳文化
第3回 鎮護国家思想と天平文化
第4回 弘仁・貞観文化
第5回 国風文化(前編)
第6回 国風文化(後編)
第7回 院政期の文化
第8回 鎌倉文化(前編)

広告

※本記事はプロモーションを含む場合があります。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事