大学入試の数学IAで出題される「長い問題文」読解のポイント

こんにちは。数学講師の大塚志喜です。

さて,近年では共通テストをはじめ数学の問題文の長文化が進んでいます。
「問題文が長くて何をやったらいいのかわからない」などの相談を受けることも多いです。

ということで今回の記事では,問題文読解のポイントついてお話ししていこうと思います。

『基本問題「は」解ける』では不十分

まず普段の学習姿勢が非常に重要になってきます。

特に数学を苦手にする学生に多いのですが,教科書の問いや問題集の基本問題など,「見たらすぐ解けるようにならなければいけない問題」が解けるようになって数学の勉強をしている「つもり」になっている学生が非常に多いと感じます。

実際のところ,学校の定期試験はそれで点数がある程度取れてしまう場合がほとんどなので,それを数学の勉強と勘違いしてしまうのも,正直仕方のない部分があります。

大学入試では「基本問題は解けて当たり前」

しかし,それでは大学入試の得点にはあまりつながらないわけです。
なぜなら大学入試のレベルになると,「それが解けるのは当たり前で,点数以前の話」になってきているからです。

もちろん共通テストなどの序盤の問題はそういった基本問題が並んでいます。
しかし,後半の方ではそんなものでは太刀打ちできません。

「基本問題が解けるのは当たり前。その知識や技術を,今目の前にある問題解決のためにどう用いるか」が大切なわけです。

したがって「目の前の問題が解けるようになる」ことを目指す勉強では,必ずどこかで壁にぶつかることになります。
基本問題は解けて当たり前という気持ちを常に持って問題演習する意識が大切です。

数学の問題文読解のポイント――2022 年度共通テストを例に


では実際の問題を見ながら色々と考えていきましょう。
2022 年度共通テスト本試験第3 問をご覧ください。

見開きで「プレゼント交換」をテーマにして問題が始まっています。

文章量に圧倒される人は「数学ガールの秘密ノート」を!

前回の記事でもお話ししましたが,まずこの程度の文章量で長いと感じる場合、まずは活字に対する耐性をつけましょう。

前回の記事では「なんでもいいから本を読もう」と書きましたが,まだ読む本に悩んでいる人には「数学ガールの秘密ノート」という本をお勧めします。

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活字に触れる機会になるだけでなく,数学に触れる際に意識しておいた方がいい大切な考え方がたくさん書かれていて,とてもいい数学の勉強にもなります。

苦手な分野から読み進めても大丈夫なようになっていますから,是非読んでみてください。

スピードよりも,「正解できる問題を確実に取る」意識

さてすこし話が脱線してしまいました。
本題に戻ります。

この問題は「乱列」をテーマにした問題になっています。

しかし問題を解いている側にとってそんなものはどうでもよいことです。
とにかくこの問題のシチュエーションを把握することに全力を注ぎましょう。

特に場合の数・確率の問題は,問題で設定されているルールをほんの少しでも読み間違えるとそれが致命傷になってしまう問題が少なくありません。

 

問題をいかに速く読むかではなく,いかに正確に問題の状況を把握できるかを大切にしてください。
スピードなど後からいくらでもついてきます。

スピードよりも,正解できる問題を確実に取るという気持ちを持ちましょう。

解ける問題なのに,読み間違いで点数を落としてしまうのは本当にもったいないです。

特に場合の数・確率では「具体化」が効果的

それと特に場合の数・確率の分野なのですが,問題文の状況把握に効果的面なのが,具体化です。

この手の問題はいきなり「確率を出せ」だの,「全部で何通りか答えよ」だの,いきなりどころか最後の最後まで数値を聞いてくる場合がほとんどです。

そのため計算に終始した学習をしてしまい,問題をしっかりと読まず,読めたとしても$\rm{P}$や$\rm{C}$をよくわからないまま使ってしかも間違えてしまうという学生は非常に多いです。

例:「A,B,Cの並べ方は全部で何通りあるか」

たとえば

$\rm{A,B,C}$の並べ方は全部で何通りあるか

という問題があったとしましょう。

この問題に対して「あ,異なる$3$つの並べ替えだから$3!=6$通りだ」としか思えない状態だと非常にまずいわけです。

理想は「の$6$通りあるな」のように,その$6$の内訳が見えているかどうかです。

そもそも何を数えているのか把握できなければ,全部で何通りあるかなどわかるわけがありません。

このように具体的に数えているものを把握する訓練を積んでいると,例えば今回の問題では,同じ人に同じプレゼントが渡らないようにするわけですから,「プレゼント交換が終了するようなプレゼントの配り方は$\rm{BCA}$と$\rm{CAB}$の$2$通りしかないな」とすぐに考えることができるはずです。

多少文章が長くなっていても所詮は数学の試験です。
難解なルール設定になっていることなどほぼありません。

しかし,基礎がきちんと出来上がっていなければ,文章の読解をしながら,考えたこともないような方法を同時に考えていかなければいけなくなり,結局何をやったらいいのかわからないという状況に陥ってしまうわけです。

 

例:「A,B,Cの並べ方は全部で何通りあるか」

人間は大抵2つ以上のことを同時にやろうとするとかなりの負担になってしまいます。

問題文は当然初見なわけですから,試験での負担を減らそうと思ったら,数学的な知識がいかに自然に出てくるかの方を普段の学習で鍛えていくのが大切になります。

それこそ基本問題への解答は「あたりまえ」にできるレベルでないと,以前のセンター試験のように問題序盤で点数をかき集めることすらできません。

このような意識で数学の知識や技術を身につけるように普段から勉強を続けていくと,その分文章を読む際の負担はグンと減っていきます。

読み間違いなども起こりにくくなります。

おわりに

今回の記事はいかがだったでしょうか。

長い文章問題に困ってしまうのは,文章が長いだけが原因でない場合がほとんどです。
そもそもその問題を解くための数学的な知識や技術が曖昧である場合がとても多いです。

センター試験では曖昧なものであってもそれなりに得点できる問題が多くありましたが,共通テストになってそのような問題がとても少なくなっている印象です。

共通テスト型や2次試験型などという区別をまずは意識せず,試験の形式関係なく得点できるような数学力を身につけるというのが,現状できる勉強の中で最も正解に近い方針なのだと最近よく思います。

受動的に知識を受け取るだけでなく,その受け取った知識を能動的に利用していくことを大切にして,これから数学学習を進めていっていただければと思います。

では今回はこの辺で。また次の記事でお会いしましょう。

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