こんにちは、羽場です。
今回は第2章の第2節の短文演習、土井隆義『キャラ化する/される子どもたち』の本文を読む際に押さえておきたいポイントを解説します。
現代文学習の第一歩を踏み出そうとしている皆さんに宛てて、2023年3月にZ会から拙著『スマートステップ現代文』が刊行されました。
現代文の学習に悩んでいる受験生、これから現代文学習を始めようと思っている受験生はぜひ手に取ってみてください。
今回の記事は問題を解いた上で、本書の解説と合わせてご覧いただくとより効果的です。
目次
出典解説(土井隆義『キャラ化する/される子どもたち』)
今回の出典は社会学者の土井隆義氏による『キャラ化する/される子どもたち』でした。
別箇所ではありますが、本書は2016年のセンター試験(本試験)でも出題されています。
「キャラクター」の時代から「キャラ」の時代への変化、内キャラ/外キャラというトピックが記憶に残っている人もいるかもしれません。
なお、本書は岩波書店から刊行されている小冊子シリーズ『岩波ブックレット』の1冊です。
手頃な価格、小冊子という手に取りやすいものながら、現代社会の課題に切り込む必見のシリーズです。
本書に限らず、シリーズの中から興味のあるものを読んでみてはいかがでしょう。
本文の全体構造――時代の対比を読み取る
まずは第①段落を見ていきましょう。
第1文。
この一文を読んで、何か気づくことはありませんか……?
「かつて」「あった」と述べる場合、どのようなことが前提になっているでしょうか。
このように「かつてと現代」「17世紀と20世紀」など、時代を比較しながら論が展開されていくことはよくあるものです。
ここではこれを「時代の対比」と呼びましょう。
この書き出しなら毎回必ずそうなるというわけではありませんが、時代を表す表現が用いられた場合、対比が現れる可能性は非常に高いと考えておきたいところです。
評論文では対照的な二つを比べながら書き進める書き方がよく用いられる。
→第2章[第7節]
実際、今回の文章では第①段落が「かつて」、第②段落で「今日」の社会について述べています。
頻出の対比
ここで、頻出の対比を4つほど紹介します。
- 時代の対比
- 西洋と日本
- 通念(一般論)と筆者の論
- 対義語(「肉体と精神」など)
これらの表現は対比の形で展開されやすいものです。
こうした表現が出てきた場合は対比の可能性を考えながら、それぞれの特徴をチェックしながら読み進めると良いかもしれません。
第①段落の読解
それでは、改めて第①段落から見ていきましょう。
先ほども述べたように、第1文(かつて、〜ありませんでした。)の部分から、対比の関係を予想します。
対比の関係に気付いた場合、それぞれの特徴をチェックしながら整理していきましょう。
このように「展開を予測する」作業を積み重ねながら読み進めていくことは重要ですし、さまざまなことを考えながら読み進めたいものです。
特に「読む」訓練を積んでいる段階ではこのように丁寧に「頭を使って読む」ことを意識してください。
ある程度の予測をしつつ、文章を読み進める中で確認と修正を積み重ねていきましょう。
接続語に注意しつつ読み進める
さて、第2文以降を見ていきましょう。
第2文の文頭に「だから」とあることに注目してください。
いわゆる順接の接続表現ですね。
前で述べていることが後ろで述べることの原因・理由・成立条件などになっていることを表す接続表現。
したがって・だから・ゆえに・そこで など。
今回は第1文の「安定した価値の物差しがあった時代」には個々の評価が揺らがなかったから(原因)、他者の評価に左右されることが少なかった(結果)のだと述べていることがわかります。
この内容を第3文(「場合によっては〜」)で補足し、第4文の「社会の〜からです。」に繋がっていきます。
離れた文同士の対応関係
ここで、第4文の文末に「〜からです。」とあることに気づきます。
つまり、第4文は直前の第2・3文(「だから〜できました。」)の理由を表していることがわかります(図2)。
実はここに大きなポイントがありました。
この段落の第1文(「かつて〜ありませんでした。」)と第2・3文の関係を思い出してください。
この部分は「だから」で繋がっており、第1文が原因となって第2・3文が結果という関係でした(図1)。
つまり、第1文は第2・3文の原因、第4文も第2・3文の原因ということになります。
今回の場合、第1文で述べた内容を第4文で具体的に説明しているという関係になっています。
今回は、読解の時点でこの関係に気づけていれば設問に解答する際にも活用できました。
並立(並列)・添加(累加)の関係に注目する
そして第5文の冒頭には、「また」という接続表現が用いられています。
この表現は「並立(並列)・添加(累加)」の接続表現と呼ばれるものです。
前で述べたことと後ろで述べることを並列させようとしたり、前で述べた内容に付け加えようとしたりする際に用いられる接続表現。
また・ならびに・および・かつ・さらに・しかも・そのうえ など。
ここでは前で述べていた「かつての社会の特徴」に少年たちの様子を並立させています。
そして、それらを続く文の「いずれにせよ」で受け、かつての社会の特徴をまとめる形で第①段落を結んでいることを読み取りましょう。
第②段落の読解
さて、第②段落です。
対比の関係に気づいたら、それぞれの特徴をチェックしながら整理していくのでした。
第①段落同様、丁寧に今日の社会の特徴を拾っていきましょう。
- 時代の対比を見抜く
- 接続表現を活用する
- 遠く離れた文同士の対応関係を見抜く
では、これらを踏まえて設問に解答していきましょう。
『スマートステップ 現代文』書籍情報
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第2章「読解スキル編」補講 | |
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