【数学ⅠA】教科書の章末問題を活用した「図形と計量」の学習法

こんにちは。数学講師の大塚志喜です。

章末問題をやれという指導はよくあるのですが,「章末問題を具体的にどう使うか」「何を得るために章末問題の問題を解くのか」を細かく理解して取り組める人は少ないのではないかと思います。

そこで、今回の記事では、図形と計量分野を学習していくにあたって,教科書の章末問題をどう利用していくのが効果的かについてお話ししていきます

今回は図形と計量の分野についてお話をしていきますが,基本的にはどの分野も根底にある「大切なところ」は同じですので,今回の記事の内容を他の分野にも活かしてください。

章末問題はその分野の基礎最終確認問題集

数学の分厚い問題集は「問題辞書」として利用しよう
章末問題は,「この問題が解ければこの分野の基礎はとりあえず身についているね」という問題が並んでいます。

なので,章末問題の問題がすべてすらすら解けるようでしたら正直そこに留まり続ける必要はありません。

もっとレベルの高い問題だったり,他の分野の問題にどんどん進んでいくべきです。

章末問題の中に解けなかった問題があるときに注意

問題は章末問題の中に解けなかった問題があるときです。

章末問題は基礎的な土台が出来上がって入れば解ける問題がほとんどです。
しかし,基礎的と言う言葉を勘違いしてはいけません。

「基礎=『簡単』」ではない

ここで言う基礎というのは「公式に数値を当てはめれば答えが出てしまう問題」や「例題や練習問題で学んだ問題の解き方をそのまま再現すれば解ける」などという「簡単」と言う意味では使っていません。

基礎というのは,身につけていればたとえ見たことのない問題であっても学習した内容を踏まえれば答えに辿り着くという土台のことを言います。

ここを勘違いしてはいけません。

章末問題を学ぶ際に重要なスタンス

章末問題の解き方を覚えて「解けるようになった」と錯覚してしまう人が数多くいますが,重要なのは「ここの土台がしっかりしていればこの問題は当然こうやって解くよね」というスタンスで問題が解けているかどうかなのです。

これがしっかりしないまま進んでしまうと,ほとんどの人が1週間後には解き方を忘れてしまって答えを出すことができなくなってしまうのではないでしょうか。

これではどんなに一生懸命時間を使って頑張っても,定期試験ではそれなりの結果が出てしまうかもしれませんが入試では範囲が広すぎて到底太刀打ちできません。

他人に説明できるレベルで自分の中に溶け込ませる

大切なのは「その問題の解き方を覚えること」ではなく,「その問題はなぜそのように解くのかを他人に説明できるくらいのレベルで自分の中に溶け込ませること」なのです。

このように一問一問できるようになっていけば,その分野だけでなくその分野を使った融合問題や発展問題,さらには全く関係ない分野の問題まで自力で解けるようになる可能性がぐんと増していきます。

解けない問題,説明ができない問題の扱い方


では具体的にどうするかについてお話ししていきます。次の問題を考えてみましょう。
章末問題にあるくらいの内容が含まれた問題です。

例題

下の図のにおいて,M はAB の中点であるとする。このとき,等式$$\rm{OA}^2 + \rm{OB}^2 =2(\rm{OM}^2 + \rm{AM}^2 )$$が成り立つことを示せ。

さて,まずは皆さんこの問題を解いてみましょう。

以下に模範解答を載せますので,解けるか,解けなくて諦めるかしたら次の模範解答を追いかけてみてください。

模範解答

$$\theta = \angle\rm{OMC}$$と置くと,$$\angle\rm{OMB} = 180^\circ − \theta$$と書くことができる。ここで$\triangle{\rm{OAM}}$において余弦定理より$$\rm{OA}^2 = \rm{OM}^2 + \rm{AM}^2 − 2 · \rm{OM} · \rm{AM} · \rm{cos}\theta · · ·①$$と書ける。また,$\triangle{\rm{OMB}}$において余弦定理より$$\rm{OB}^2 = \rm{OM}^2 + \rm{BM}^2 − 2 · \rm{OM} · \rm{BM} · \rm{cos}(180^\circ − \theta) · · ·②$$とも書ける。ここで,$$\rm{cos}(180^\circ − \theta) = − \rm{cos}\theta$$であることと,$$\rm{BM} = \rm{AM}$$であることとから,$②$は$$\rm{OB}^2 = \rm{OM}^2 + \rm{AM}^2 + 2 · \rm{OM} · \rm{AM} · \rm{cos} \theta · · · ②'$$と書くことができる。$①$と$②'$を加えることにより,等式$$\rm{OA}^2 + \rm{OB}^2 = 2(\rm{OM}^2 + \rm{AM}^2 )$$を得る。

この問題から何を学ぶか

解けなかった人はこの模範解答を写して終わることのないように(笑)。

この問題はたくさんの基本事項を要求しています。
証明することができた人は,以下の3 つのポイントは意識できていたでしょうか。

この問題で確認すべきポイント
  • 余弦定理を使えるか。
  • $\rm{cos} (180^\circ − \theta) = − \rm{cos} \theta$の変形ができたか。
  • 和が$180^\circ$になる2つの角のペアを見たら余弦定理の式を2本立ててみるという定跡を知っているか。

基本的な知識が身についているか

最初のふたつは本当に基本的な知識の確認です。

これができて満足するのではなく,「余弦定理だけでなく正弦定理は覚えているだろうか」や「$\rm{cos}$だけでなく$\rm{sin}$は大丈夫だろうか」など,周辺の確認もするとなお効果的です。

図形が変わっても利用できるか

そして3つ目は,例題や練習問題で身につけるべき例題が,図形が変わっても利用できるかについての確認です。

この技術は違う図形で必ず取り扱っているはずです。
円に内接する四角形の対角線の長さを計算するとき全く同じことをしますし,この図形に関してはセンター試験では頻出でした。

その2つの角度が横に並んでいるだけです。

図が大事なのではなく,「和が$180^\circ$ であるという事実」が大事なんです。
これが身についていれば初見でも解答可能な問題でした。

重要なのはその問題を他の「見たことがない問題」に活かせるようになること

このようなポイントが頭の中でしっかりと整理されていれば,上のような解答がかなり自然に出てくるようになるのではないかと思います。

一問一問このくらいの密度で学習していかないと,入試はおろか定期試験の対策でも試験本番でド忘れしてしまえば0点にまっしぐらです。

大事なのはその問題が解けることをゴールにすることではなく,その問題を解く能力をいかに他の見たことのない問題に活かせるようになるかなのです。

おわりに

今回の記事はいかがだったでしょうか。

定期テストに向けた勉強と入試に向けた勉強は違うと思ってしまう人も多いかもしれませんが,少なくとも数学は「その場しのぎの一夜漬け丸暗記」なんてしていると必ず後で痛い目を見ます。

入試で得点できるレベルを見据えながら普段から勉強していると,定期テストのための勉強など正直ほとんどする必要がなくなってしまうのが数学という科目です。

しかし一問一問をこの密度でしかも独学で身につけていくのは本当に大変ですから,身近にいる数学がしっかりとできる指導者に助けてもらうことがものすごく大切になってきます。

普段からコツコツ,なかなか頭から抜けることのない学力をしっかりと積み上げて,普段の定期試験や入試に通用する学力をつけられるように頑張ってほしいと思います。

それではまた次の記事でお会いしましょう。

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