その問題、誘導がヒント!大学受験数学で得点を伸ばすコツ

どうも,みなさんこんにちは。高橋佳佑です。
大学入試の数学の問題の中には,一見複雑に見える問題も誘導に乗ることで必要な計算や解答の方針が自然に立つような問題があります。今回はそのような問題において,誘導の意味や読み取り方,得点につなげるコツなどについてお話します。

広告

問いは独立していることもつながっていることもある

まずはじめに,大学入試数学の問題の構成は以下の2種類が考えられます。

①それぞれの問いが独立しているもの。
②問い同士につながりがあるもの。

「①それぞれの問いが独立しているもの」とは別の能力を測るものです。例えば図形の問題で,

例題
(1)ABの長さを求めよ。
(2)∠DEFの大きさを求めよ。

このように
(1):三平方の定理で長さを問う問題
(2):円周角の定理で角度を問う問題
と, 別の知識の習得の確認をします。

一方で、「②問い同士につながりがあるもの」とは,

例題
(1)ABの長さを求めよ。
(2)△ABCの面積を求めよ。

のように
(1):三平方の定理で長さを出させる問題
(2):(1)で出した長さを使って面積を問う問題
と, (1)と(2)は流れが存在します。

「①それぞれの問いが独立しているもの」は状況的に教科書と同じです。

今回のテーマは「②問い同士につながりがあるもの」に対してどうアプローチするかです。

誘導の与えられ方は様々

一口に誘導といっても様々なタイプがあります。
(1)で何かを求め, それを使って(2)が解けるようになるような問題であったり, (1)と(2)は無関係に解け, それらを使って(3)の問題が解けるようになったりします。

誘導に乗るコツ

具体的にどういう風にして問題を解くかを見てみましょう。

問題の状況を整理してくれている

素直な誘導のつき方として,状況を整理してくれるようなものがあります。

数I範囲では

例題
二次関数$f(x)=x^2+2ax+1$を考える。
(1)放物線$y=f(x)$の頂点の座標を求めよ。
(2)すべての実数$x$に対して$f(x)>0$となるような定数$a$の値の範囲を求めよ。

このように「放物線の概形に注目してください」という趣旨の問いがついており,これ以降はそのグラフをもとに問題を解いていけばよいです。

この問題の解答はこちらを参照してください。

数Ⅱ, Ⅲの問題でも同趣旨の誘導がある場合があります。

例題
(1)関数$f(x)=\cdots\cdots$の極値を求めよ。
(2)曲線$y=f(x)$と$x$軸で囲まれる図形の面積を求めよ。

(1)でグラフの概形を掴んで, どの図形の面積を求めればよいのかを誘導してくれています。

これらの問題は, 素直に解いていけば必要なことが揃うような誘導になっています。
広告

また,数学Aの場合の数や確率, 数学Bの数列の範囲では, 具体的な数値での例を実験させるような問いがあります。

問題ごとにルールや設定の異なる状況をを考えるので, 具体例を考えることによりルールや状況の把握をしてもらいたい, という趣旨です。

下の問題を見てみましょう。

例題
以下のルールに従って, $5$人で$1$回じゃんけんを行う。 ①$1$種類の手が出たとき, あいことする。
②$2$種類の手が出たとき,通常のじゃんけんのルールに従う。
③$3$種類の手が出ているとき, 同じ手を出している人が少ない人を勝者とする。
例えば, $2$人がグー, $2$人がパー, $1$人がチョキだった場合, チョキを出している人が勝者となり, $3$人がグー, $1$人がパー, $1$人がチョキだった場合, パーを出している人ととチョキを出している人が勝者となる。
(1)あいことなる確率を求めよ。
(2)$1$人の勝者が決まる確率を求めよ。
(3)勝者の人数の期待値を求めよ。

(1),(2)で具体的な計算をし,今回のルールの確認して最終目標は(3)の期待値の計算になります。

解答はこちら
(1)を解くとき,あいこになる条件を確認します。今回の設定では,あいこになるのはルール①のときに限ります。
$5$人の手の出し方は$3^5$通りで, このうちあいことなるのは,全員がグーまたはチョキまたはパーの$3$通りなので確率は$$\cfrac{3}{3^5}=\cfrac{1}{3^4}=\cfrac{1}{81}$$となります。(2)に進むと状況は変わります。今回の設定では$1$人が勝つのはルール②とルール③の状況が存在します。ルール②の場合,勝者の選び方は$5$通りで,手の出し方は$3$通りなので,全部で$5\times3=15$通り。

ルール③の場合,勝者の選び方は$5$通りで,手の出し方は$3$通り。
他の$4$人の手の出し方について考えると,$1$人がグーで勝者となる場合,残り$4$人中$2$人がパーで,$2$人がチョキを出しています。パーを出す人の選び方は${}_4{\rm C}_2=6$通り。この段階で,残り$2$人の手はチョキの$1$通りになります。
$1$人がパーで勝者になる場合とチョキで勝者になる場合も同じなので$5\times3\times{}_4{\rm C}_2=90$通り。

以上より,$1$人が勝者となるのは$15+90=105$通りとなります。
求める確率は$\cfrac{105}{243}=\cfrac{35}{81}$です。

いよいよ(3)です。
勝者の人数は$0$, $1$, $2$, $3$, $4$の$5$種類ありますから,この中で計算しやすい$4$種類を計算しましょう。
$0$人と$1$人が勝者となる確率はそれぞれ(1)$\cfrac{1}{81}$,(2)$\cfrac{35}{81}$です。

勝者が$3$人, $4$人となる場合はルール②「2種類の手が出たとき」に限ります。
一方で勝者が$2$人となるのは,ルール②「2種類の手が出たとき」とルール③「3種類の手が出たとき」の状況が考えられます。
この場合は,勝者が$3$人, $4$人となる場合を求めるのが速そうです。

勝者が$3$人となるのは,勝者の選び方が${}_5{\rm C}_3=10$通りで,手の出し方が$3$通りなので$10\times3=30$通り。
勝者が$4$人となるのは,勝者の選び方が${}_5{\rm C}_4=5$通りで,手の出し方が$3$通りなので$5\times3=15$通り。
それぞれ確率は$\cfrac{30}{243}=\cfrac{10}{81}$,$\cfrac{15}{243}=\cfrac{5}{81}$となります。
勝者が$2$人となる確率は$$1-\cfrac{1}{81}-\cfrac{35}{81}-\cfrac{10}{81}-\cfrac{5}{81}=\cfrac{30}{81}$$と求められます。

以上より勝者の人数の期待値は
$$0\times\cfrac{1}{81}+1\times\cfrac{35}{81}+2\times\cfrac{30}{81}+3\times\cfrac{10}{81}+4\times\cfrac{5}{81}=\cfrac{145}{81}$$
となります。

広告

式の形に注目しながら変形を試みる

数学Ⅲの範囲の問題を見てみましょう。

例題

(1)$x\geqq0$のとき, 不等式$x-\cfrac{1}{2}x^2\leqq \log(1+x)\leqq x$を示せ。
(2)$a_n=\left(1+\cfrac{1}{n^2}\right)\left(1+\cfrac{2}{n^2}\right)\cdots\cdots\left(1+\cfrac{n}{n^2}\right)$とするとき, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n$を求めよ。

(1)で不等式を示し, (2)とのつながりを考えてみます。

(2)では$\log$が見当たりません。強引に$\log$をつけて$\log a_n$を考えることにより,
$\begin{align*}
\log a_n&=\log\left(1+\cfrac{1}{n^2}\right)+\log\left(1+\cfrac{2}{n^2}\right)\cdots\cdots+\log\left(1+\cfrac{n}{n^2}\right)\\
&=\sum_{k=1}^n\log\left(1+\cfrac{k}{n^2}\right)\end{align*}$
となり積が和で表せます。
このとき, $(1)$の不等式において$x=\cfrac{k}{n^2}$をおいてみようと決まります。
実際,
$$\cfrac{k}{n^2}-\cfrac{1}{2}\left(\cfrac{k}{n^2}\right)^2\leqq \log\left(1+\cfrac{k}{n^2}\right)\leqq \cfrac{k}{n^2}$$
となり,$k$=$1$,$2$,$\cdots\cdots$,$n$として加えれば
$$\sum_{k=1}^n\left\{\cfrac{k}{n^2}-\cfrac{1}{2}\left(\cfrac{k}{n^2}\right)^2\right\}\leqq\sum_{k=1}^n\log\left(1+\cfrac{k}{n^2}\right)\leqq\sum_{k=1}^n\cfrac{k}{n^2}$$
したがって
$$\sum_{k=1}^n\left\{\cfrac{k}{n^2}-\cfrac{1}{2}\left(\cfrac{k}{n^2}\right)^2\right\}\leqq\log a_n\leqq\sum_{k=1}^n\cfrac{k}{n^2}$$
が得られます。
$n\to\infty$とすると, 不等式の最左辺と最右辺は

$\begin{align*}
&\displaystyle\sum_{k=1}^n\left\{\cfrac{k}{n^2}-\cfrac{1}{2}\left(\cfrac{k}{n^2}\right)^2\right\}\\
=&\cfrac{1}{n^2}\cdot\cfrac{1}{2}n(n+1)-\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{1}{n^4}\cdot\cfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\to\cfrac{1}{2}\end{align*}$

$\displaystyle\sum_{k=1}^n\cfrac{k}{n^2}=\cfrac{1}{n^2}\cdot\cfrac{1}{2}n(n+1)\to\cfrac{1}{2}$

となるから, はさみうちの原理より
$$\lim_{n\to\infty}\log a_n=\cfrac{1}{2}$$
が得られます。よって,
$$\lim_{n\to\infty}a_n=\sqrt{e}$$
となります。

このように, 示したもの, 求めたものが使えるように変形を考えることが要求されます。
広告

問題に行き詰ったら前の問題を確認する

問題を解き進めるときに,前の問題との関連が読み取れないときは素直に問題を解き進めましょう。その上で,方針が立たなかったり,解き進められなかったりする場合は前の問題を改めて見てみます。

問題を解き進めたことで最初の式とは違う式,状況になっていて,前の問題との関連が見えてくることもあります。
広告

おわりに

秋になり,そろそろ過去問に触れる機会が増えてくると思います。実際の入試問題に触れ,今回お話した「誘導に乗る」ということがどういうことなのか体感してもらいたいです。

誘導のない問題は,いろいろなことを独自に思い付き,論証したり計算して求めることになるので難易度が高いです。一つの結論を得るために,前にいくつか問題がついているときは「誘導かな?」と疑ってみてください。

これを機に,問題の構成に注目してみましょう。

それでは, 今回はこの辺で!

広告

※本記事はプロモーションを含む場合があります。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Xでフォローしよう

おすすめの記事